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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

恋愛ファンタジー ただ、君に逢いたい

【短編小説】『ただ、君に逢いたい』6(恋愛ファンタジー)・終

「全部、俺のせいなのか……?」 俺があの時、清く高潔な精霊の心を、手前勝手な劣情で汚(けが)したからか。俺はまた守りたい者を傷つけてしまったのか。 ヤトラは奥歯をかみしめ、ふと足元に目をやった。星蘭(せいらん)草に混じって、薄紅の花が群生している…

【短編小説】『ただ、君に逢いたい』5(恋愛ファンタジー)

「……すまない、トウカ。あんたは俺を救ってくれたってのに……」 最低だな俺は、ひとりごちると自嘲した。黒髪をかきあげる。それから丁寧にトウカの衣服を整えると立ち上がり、引っさらうように琴をつかんだ。「そうだな……あんたの言うとおりだよ。俺は自分の…

【短編小説】『ただ、君に逢いたい』4(恋愛ファンタジー)

トウカは精霊だから、ヤトラがなにも語らずともわかってしまう。この男が人の世でなんのために生まれたのか、ずっと生きる意味を見いだせないでいたこと。誰かに必要とされたくて、つながろうと必死にあがき、やっとえた居場所を――悪意により一瞬にして奪い…

【短編小説】『ただ、君に逢いたい』3(恋愛ファンタジー)

「なあ、あんたさえ俺を受け入れてくれれば、俺は霧の国で生きていけるんだろう。たのむトウカ、このとおりだ。どうか精霊の王に取りついで、このままここにいさせてくれ」 深々と頭を下げる男のうなじを眺めながら、トウカは奥歯を噛みしめた。自分より上背…

【短編小説】『ただ、君に逢いたい』2(恋愛ファンタジー)

ヤトラはまるで幼子のごとく、トウカの後をついてきた。ずいぶん興味深げにこちらの挙動を眺めているなと思いきや、そのうち勝手に先回りして仕事を手伝うようになった。 男は見目が良かったが、手先も器用で、なにより頭が切れた。トウカが面倒くさがって直…

【短編小説】『ただ、君に逢いたい』1(恋愛ファンタジー)

あらすじ 「霧の国の砦を守る精霊の少女トウカは、ある日、不審な侵入者を発見する。ヤトラと名乗ったこの人間の青年は思いのほか、トウカに積極的で――?!」 この手の恋愛ファンタジーは、昔からもっとも多く量産してます。 キュンキュンする話がお好きな方…