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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

【詩エッセイ♪】 夢のたびびと73『地中海の車窓と一杯のコーヒー』・兵役雑感

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こんにちは、ゆきうさぎです。
はじめましてのみなさま、ご訪問ありがとうございます☆
前からご覧になられているみなさま。引き続き、「夢たび」お楽しみ下さい♪
子供の頃から夢を見ずにはいられないまま、大人になりました。そんなゆきうさぎが10年近く前に書いていた詩「夢のたびびと」に、このたび新たに「夢たび景色」を書き加えたものが、このブログです。 

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イラスト提供:ふわふわ。り

 

夢たび73『地中海の車窓と一杯のコーヒー』 

ぼくがまだ ちっぽけな学生だったころ

 

周囲はいつも ありふれた話題 
なじみの顔に 変化のない日常

 

だからある日 家を飛び出したんだ 
薄汚いリュックサック ひとつで
ずいぶん たくさんの街を巡ったものさ

 

あれはイタリア国境沿いの 小さな駅
一時間遅れで ついた列車は
軍服を着た若者で ごったがえしていた

 

わけもわからず 列車に乗りこんだぼく
背後で重い音を立て 扉が閉まった

 

むせかえるような 人いきれ
指定席から あぶれた兵士たちは
大荷物を抱え 通路から窓を眺めている

 

突然 老女が声をかけてきた
個室の中には 家族連れ
中年の男女に 十代の娘 
面差しに あどけなさを残した 青年兵士もいた

 

びっくりしたかい 旅の人
みんな さっき兵役から解放されたばかり
これから 短い休暇に入るのさ
わたしたちは 家で待ちきれず 孫を迎えに来たんだよ

 

差し出されたのは マグカップ
青年のため 魔法瓶に入っていたであろうコーヒーは
しびれるほど熱く ほろ苦く 
体の芯までしみこんで ほんの少し涙が出た

 

唐突に 母さんの顔が見たくなった

 

自由は常に 孤独と背中合わせ
旅人といえば 聞こえがいいが 
ぼくはしょせん 糸の切れた凧だ
ふわふわとただ 他人の地を流れゆくだけ

 

この列車の 若者たちのように
ぼくは家族のため 国のために 
なにかを成しただろうか?

 

車窓から 飛ぶように過ぎゆく 地中海を望む

 

この海の青さと コーヒーの味を 
ぼくはきっと 忘れまい 
 

【夢たび景色】兵役雑感

本日の夢たび73は、ゆきうさぎが大学生だったころの実体験を元に創作したものです。学生……まだ何者でもないかわりに、全然、制約がなくて自由だった時代。笑
当時は猿岩石のユーラシア大陸横断番組等が流行っておりまして、旅行会社が考えた旅行ツアーに乗るのではなく、海外も個人旅行しようぜ的なブームが日本に初めて到来していたころでした。
HISもあのころ創設されたんじゃなかったか。それまではJTB一強だったのが、海外旅にもいろいろ選択肢が増えてきていた。
そんなブームに乗っかったというわけでもないのですが、まあ主にゆきうさぎは金欠学生だったのと、言葉通じるし、ヨーロッパも全然初めてじゃないし(住んでたし)、ということで友達と二人でドイツ・フランス・イタリアをゆるっと何週間かかけてめぐる旅を計画しまして。
トーマスクック(ヨーロッパ鉄道時刻表)片手に、ほうぼう、うろうろ巡っていたわけです。
 
で。フランスはパリにいたあと、国内線でマルセイユあたりに飛んで(マルセイユには知り合いのドイツ人先生がいました)、地中海のローカル線をてってこイタリアのほうに乗りまして。たしかニースに泊まったかな。そのあとモナコでも下車して、有名な水族館で気づかずピラニアの水槽に手をつっこみかけたり←オイ、恐竜博物館みたいのを見たり、グレースケリーいいなぁと思いながら王城をめぐったりしたあと、またつれづれなるままに汽車に飛び乗り、一路イタリアへ。
 
とりあえずジェノバ終着に乗って、ピサ見た後フィレンツェに行こうか~~、と国境を越えました。当時は国境にパスポートコントロールがありましたが、ここのコントロールもまぁいいかげんというか、ゆるかったな。ローカルでした。
現地ではみんな生活してて、国境またいで勤めてる人もいるし、日本人なんてあんまり通過しない時代だったんでしょうからね。
とにかく「学生です!」でわりと済んでた。学生はみんな汽車で国またいで貧乏旅行してますからね、普通に。ヨーロッパはね。
 
そしたら、わりとすぐにどわあああっ、と兵隊さんが乗りこんできて、あっという間に制服軍団、いわば修学旅行列車の中の異邦人、みたいな状態になってしまったんですよ。ななな、なにごと、この兵隊さんたち?!
でもよく見ると、若いの。兵隊さんが、自分より。しかも家族も一緒に乗っていたりして。
ヨーロッパの電車なんてほぼほぼ座れるのに、東京並に満員電車でね。うわ、立ちっぱなしでジェノバまで行くの~~?!いやだーー!!!とも言えないくらい、とにかく兵隊、兵隊、兵隊さんだらけ。こんなに兵隊に囲まれた経験ないっす、ゆきうさぎ。なんか緊張する、軍服!!
 
そしたら、見ず知らずのすぐ近くにいたおばあちゃんが、話しかけてきたのよね。イタリア語で。全然イタリア語わかんなくて、くそっ、私はなぜイタリア語を勉強しなかった、くらいわからないことが悔しかった。のはおいておいて。
孫らしき軍服着た兵隊さんが、そのおばあちゃんの話を英語で通訳してくれるわけ。
それで、ようやく状況が理解できた。
国境近くに、兵役で集められた若者たちが訓練されている場所があって、休暇がちょこっとだけでたんですって。で、みんな短い休暇を楽しみに、今まさに帰省するところだったという。
あー、だからなんかみんな、今、寮生活から解放された学生みたいな顔になってたんだ!
 
おばあちゃんは孫の顔が早く見たくて見たくて、わざわざ家族で迎えに来たところだったと。これは孫のために用意してきたあつあつのコーヒーなんだけど、あんたもコーヒー飲みなさい、美味しいから。って古い昔の魔法瓶をがちゃがちゃ言わせてね、ゆきうさぎと連れにコーヒーくれたんですけれどもね。
 
まあ、エスプレッソ大好きイタリア人の現地コーヒーですからね。普通にめちゃくちゃ美味しい。そして苦い。
言葉も通じない見ず知らずの他人に、大好きな孫のために入れたコーヒー、ふるまってくれたおばあちゃんのこと、ゆきうさぎたぶん一生忘れませんよ。
人の優しさや思いやりって、国も年齢も関係ない、本当に。
 
でも少なからずショックだったのは、その孫男子がゆきうさぎより年下だったこと。当時たぶん高校3年生くらいだったはずです。
えっ、こんな小さい男の子が、国を守るために身を張って、親元離れて厳しい訓練をしているの?!?!がーん。
なんかゆきうさぎの中で、それまで兵隊さんって年上で、ごつくて、自分には適わない力のある存在、たとえるならお父さんみたいなイメージがあったんですよね。
だけどよくみたら周り中、本当にハリーポッター映画に出てくる上級生軍団くらいの兵隊さんばっかりだった。
えっ、まちがいなく日本の男子学生、あなたたちと同年代、ぽわーっと毎日平穏無事に学生してますけれども?!?!
 
とにかく、なんか全然ちがう、兵役ある国ってこんななんだ、とものすごく衝撃でした。
若い兵隊さんたち自体は10代らしく、わきわきもしてるんですが、それを迎えに来た家族の様子がね、誇らしい反面、心が潰れそうなくらい心配しているのも、肌で感じたし。
そりゃそうですよね、兵隊にされるってことは、ぶっちゃけ死ぬかもしれないってことでしょ。
そして若いのに、軍服を着たその年下の若者男子たちが一様にきりっと胸を張っていたのも印象的でした。
「俺たちは自分の国を、家族を守るため、今自分がやらなくちゃいけないことに従事している」
ってみんなが信念?自信?をもっている。だから一本ゆるがない芯が通っているというか、気迫が全身からみなぎっている。
 
兵役ある国の男性って、たぶん軍隊で色々と教育されるからだと思うんですが、なんかやっぱりちょっと兵役のない日本人男性とちがうところがあるような気がします。
かつて仕事でお隣の韓国へ行き、韓国国防軍が守ってる施設を見学したことがあって。
案内してくれた韓国人男性に、
「あなたも兵役をやったの?」と聞いたら
「やりましたよ」と。
「なにか兵役前と後で変化はありました?」って聞いたら、
「そりゃ、全然ちがいますよ。
国を、女性や子供を守らなきゃって意識がものすごく強くなりますし。
自分は戦いで死ぬかもしれないって意識したし、諸々規定があるからあんまり言えませんけど、とにかく大変だから、もう兵役はやりたくない。
でもまあ、やってよかったとも思います」と。
そして聞かれました、「日本は兵役がないって本当ですか?」
「ないです」
「じゃあ、あなたの会社で働いてるあの同僚の男性陣も全員、なにも知らない?できないの?たとえば、銃を扱えないんですか?」
そうです、と言ったらものすごく逆にびっくされました。
「そうですか……まあ銃を持って立つのは、大きな声じゃ言えないけれど、すごくストレスだったからな」
とも言ってました。そうだろうなぁ。でもこの人は銃を持てて、人を撃てるんだな。
海のすぐむこうの隣の国なのに、日本と韓国はちがうなぁ。
 
かつて ドイツの国営語学学校で事務をしていた兄さんなんかは、
「僕は兵役が昔からずっと疑問で、どうしても従事したくないから、かわりにボランティアで、この事務仕事をやっている」
と言っていました。
「ははっ、だから今、僕この仕事いくらしても、がんばっても、2年間は無給なんだ~~。兵役代わりだからさっ」と。
兵役ある国の世界の若者、少なからず日本の若者より、色々悩んだり考えたり感じたりしてると思うよ。いや本当に。
 
ゆきうさぎ、今、母親になって息子もいるので、この可愛くぽやぽやした息子が将来もし兵役に取られて戦地に送られたら、と思うと、もうそれだけで相当ダメージ食らいますけれど。
与謝野晶子の「君死にたもうことなかれ」以上に「絶対絶対死ぬな~~!!」って言っちゃいそう。
でも世界の国で兵役がないほうがむしろ稀なんですから、母になって息子を産んだら、その時点で普通の国の母はみんな、あのコーヒーおばあちゃんみたいな気持ちと覚悟を持つんだよなぁ。ううっ。
 
日本に住んでいると、つい遠く感じちゃう現実なんですけども、もろもろ忘れちゃいけないこともありますね。
 
それではまた。
 
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