【短編恋愛ファンタジー】竜に告ぐ 1
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みなさん、こんにちは。ゆきうさぎです☆
新年明けて、おせち、ショートケーキと料理系が続きました。
今日からは、ちょっと久々に6回連続の短編小説を上げたいと思います。
ゆきうさぎのファンタジー世界にある、とある北国のお話。
じつは去る11月に小説投稿サイトエブリスタに枠を開設してから、あちらメインに創作を上げていたせいもあり、このブログに小説を載せるのはしばらくお休みしていました。
ただ新年明けて「また小説読みたいです」というコメントも頂きまして。
ご要望有るなら、きりの良いところで、なにか手持ちを載せられるかな~?
と考えていました!
なお、ここ最近リアル生活のほうで毎日イベント目白押しのため、この小説は不定期更新予定です。
ちなみに今日は、小学校で授業時間を1時間頂きまして、大型絵本を読んだり、紙芝居したり、ゲームしたりのイベントを開催してきます~。
これは学校から保護者に直接委託された絵本読み聞かせ事業の一環で、有志のママさんボランティアによって成り立っています。
このワークは無償奉仕ですが、毎年必ず専門の先生による事前講習なんかもあり、勉強されるママさんは市営の図書館で専門講習を受講したり、学校側から曜日・時間指定もあったり。
あまり片手間にできないボランティアなので、高学年に行くほど脱落者が増えていくという。。。
でも子供たちや先生方には喜ばれているので、来年度も活動するつもりです!
私は岩波書店発刊・現在は日本語版は絶版の「マクスとモーリツのいたずら」というドイツ古典絵本を紹介するつもり。↓(これはドイツ語版)
Max und Moritz: Eine Bubengeschichte in sieben Streichen
- 作者:Wilhelm Busch
- 出版社/メーカー: Reprint Publishing
- 発売日: 2016/04/02
- メディア: ペーパーバック
そして 明日はPTAの決算日なので、またまた小学校へ行く予定……会議もあるので、たぶん午前中いっぱいはかかるだろうな~。毎日登校とか、生徒? 笑
リアルのほうが、そんなこんななので申し訳ありませんが、更新は気長にお待ち下さいませ。
では、短編小説お楽しみ下さい☆
竜に告ぐ 1
――この誉れある場所で、リュカはどんな祝詞(のりと)を奏上するのだろう。
宣誓の儀は明日に迫っていた。
アルダは祈祷所の磨き上げられた白亜の石床を眺め、ため息をついた。
私はこんなにも意志薄弱だったのか、と苦笑(にがわら)う。
――自らリュカの手を振り払っておいて、なにを今更。
未練がましいことこの上なかった。それでも思わずにはいられなかった。
せめてこの身が直氏(スヴェン)であったなら、と。
北大陸のサリアード国、その王都リュウゼリアは古来より水の加護厚き聖地だった。豊富に湧き出る清水(しみず)はかすかに甘く、清涼感を伴い、軽い病なら数日で治癒した。
この国を守護する竜神に祈れば死病も治るというので、都の中心部にある祈祷所は王宮並みの絢爛さだったし、その向かいに建つ王立の医療院は他国の追随を許さぬ施術水準を誇った。
他国から何度も保養に訪れる者も珍しくない。
アルダの父は都の北、山岳地域の郷(さと)に住む巡回医療士だった。
かつては都の医療院に務め、けっこうな数の手術をこなす敏腕だったが、アルダの母が若くして亡くなったのを契機に田舎に引きこんだ。
だからアルダは都人(みやこびと)ではなくいわゆる郷者(さともの)だった。
十七になって、遅い春の日にひとり医療院の扉を叩いた時も――見知らぬ地に修行に来たという感覚以外、なんの感慨も湧かなかった。
こんな華やかで賑やかな街が、自分の故郷とはどうしても思えなかったのだ。
むしろ驚いたのは、アルダの下宿を引き受けた貴族館の大きさだった。
代々、国の礼拝師を務めるトッサ家の邸宅は祈祷所の庭園を挟んだすぐ裏にあった。
三階建ての重厚な石造りで、部屋数は七十を超える。使用人も多く、有力貴族の屋敷とはこのようなものなのかと息を飲んだものだ。
だが執事につれられて向かった先は、本館ではなく離れだった。
サリアードの厳しい冬に異国の花を愛でるために昔、温室として使われた建物だけあって、別段寒くも不便でもなかったがーーがらんとした人気のない棟はどこか不気味で、最初の夜は寝返りばかりうち、よく眠れなかったのを覚えている。
「わたくしも残念に思っておりますのよ……貴女が平氏(テジ)でなければ、夫の命を救った医療士の娘さんですもの、本館の客室を喜んでお貸ししましたのに」
次の日、本館中央の応接間でトッサ家の貴婦人はそう言って困ったように微笑んだ。
「本当に申し訳ないことですけれど、うちの屋敷の使用人は皆、平氏(テジ)ですから。アルダさんだけを特別待遇にはできないんですの」
しかし上質の綿入り服を着て優美に頬を傾ける相手の視線は、声と裏腹に冷たかった。
「平氏(テジ)の身分で、しかも女人が医療士になるのはなかなか難しいそうですわね。お勉強のお邪魔をしないよう、今後も離れには極力、家人を近づけないようにいたしますから」
取りつく島もないとはこのことだ。
「どうぞ一心にお励み下さいね。あ、お食事はいちおう使用人の食堂のほうに用意させますけど、お好きになさって結構ですから――」
トッサの女主(おんなあるじ)は美しいが隙のない三十路半ばの女で、一人息子を溺愛するあまり、屋敷内にいる若い娘はすべて悪い虫扱いなのだという事実を、アルダはのちに知った。
けれどそれを抜きにしても、この国では厳然と階級で人の生き方が決まっていた。
王侯、貴族階級の直氏(スヴェン)は国の要職につき、絹をまとい、豊かな食事を楽しみながら一日の大半を座ってすごす。
一方、国の大半を占める平民階級の平氏(テジ)は、体を使って働き、わずかな糧を得るために朝から晩まで奔走し、狭い家屋で身を寄せ合って暮らしている。
――だから最初は、リュカの顔を見るたびに、これでいいのだろうかと思ったものだ。
あれはアルダが医療院でようやく見習い仕事を覚えたころだったろうか。
しのつく雨の降る、陰気な夜だった。
借りたばかりの医療書を机に広げ、目で追いながら、市場で買ってきた焼鳥飯(チャムル)をかっこんでいると、ふいに背後に人の気配があった。
「……うまそうな匂いだなぁ」
くぐもった声に、正直、心臓が凍った。
仲良くなった本館の下女から、この離れには温室栽培をいたく愛した先々代の亡霊が出るという噂を聞いたばかりだったからだ。
「それは平氏(テジ)の食べ物か? 俺にも一口くれ」
けれど喉枯れしたような妙な声には若々しく張りがあって――思い切って振り返れば、不愛想な表情をした少年が、高そうな絹服に身を包み、揺らめく灯(あか)りをささげ持って立っていたのだ。
それがこの館の主の息子との出会いだった。
その2に続く>>
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