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楽しく暮らそう。ゆきうさぎの創作雑記

夏だ!冒険だ!てことで【短編小説】『雲龍夢譚』1・(冒険ファンタジー)

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みなさま、こんにちは。ゆきうさぎです。
台風、すごかったですねー。通勤やらご自宅やら大丈夫だったでしょうか??
ゆきうさぎは昨日は家から外に出られませんでしたっ。
おかげさまで、子供たちの自由研究は進みましたけれども♪

今年は息子が小惑星探査機「はやぶさ」のレポート。←宇宙教室へ行ったので。
娘は自分の履くガウチョパンツをミシンで制作しております~。←ほぼ毎年、自分の使う衣服やら小物を作っている。

特に裁縫は学校の授業だけじゃ、まずできるようにならないかなー、と思うので、娘は小学校2年生から毎年夏になると、ゆきうさぎが裁縫を教えこんでおりまして。
型紙取ったり、刺繍したり手縫いしたり、ミシンの使い方は今まででもうクリアしたので、今年のミッションは「自分で工程管理すること」。

これができると、もうほぼほぼ、「自分で本を見て、自分の好きな服を作れるようになる」はず☆←あ、簡単なものですよ?フォーマルドレスとかコートとかじゃないよ。普通のズボンやらスカートね。

昨日の野口さんのお話しじゃないですけれども、「自分で問題を提起して」「自分で調べて」「自分で解決する」ってなんでも重要ですよねっ。
ということで、ゆきうさぎはほぼほぼ、プールの監督官状態でございました。

という、前フリはさておき(↑短編とまったく関係なし!!!!!)

予告しましたとおり、今日からまた6回掲載で、今度は冒険譚を掲載しまーす。
今回は少年系ライトノベルみたいなテイストかな?
それではどうぞ、お楽しみ下さいませ☆

雲龍夢譚(うんりゅうむたん)1


 凪(なぎ)は細く乾いた初夏の山道を、急ぎ足で登ってゆく。

一見してこのあたりの国の戦服ではないとわかる藍の半臂(はんぴ)に長袴(ちようこ)姿、盤長(ばんちよう)紋の入った広帯を締め、背にえらく重そうな大刀を背負って。
黒皮の長靴を履いた足取りは、坂道をものともせず軽快だった。

(ついに、辿りついた……)

 かつて凪の兄は故国で一二を争うほどの武豪だった。
その兄が『もっと広い世界に出て腕を磨いてくる』と言い残し、忽然と消えたのが十年前の春。

 どうやら別の大陸に渡ったようだとの風の噂を辿り、ようやくこの山脈へ流れついた。

(待ってろよ、紫水(しすい))

 凪は冷静になれと自分に言い聞かせながら短い黒髪を振って山頂を見上げる。
まだだ。
神の御山(みやま)――蓬山(ほうざん)の峰は、まだはるかに遠い。

 その時、耳元でちりちりと鈴の鳴るような音がして、凪は足をとめた。

「……なにか、来る」

 呟き、背負った大刀の柄に手をかけると感覚をとぎ澄ます。
神経を体外に集中させて霊動を探っても、いっこうに正体がつかめない。

 こんなことは久々だった。
肌に伝わる不穏な陰(かげ)の気配。

黒曜の瞳を光らせる。
やはり麓の村でもれ聞いた、聖なる山に妖魔が出るという噂は真実だったか。

「地虫(じむし)……いやちがう、これは」

 道の脇を埋める青い竹林がさわさわ音を立て、地面がもり上がった。

ごぼり、のっぺりした赤黒いモノが細長い顔をのぞかせる。

「――地竜か!」

 凪が叫ぶと同時に、眼のない頭がこちらをむき、口がぐわっと開いて、するどくふぞろいに並んだ歯がむき出しになった。
ち、舌打ちする。

威嚇していやがる。

竜と冠してはいても、こいつは闇世(やみよ)に暮らす巨大蚯蚓(みみず)。下級妖魔に溢れる食欲はあっても知性はない。


(どうする、斬るか?)

 柄を握る手に力を入れた時、大蚯蚓のほうが先に動いた。
ふたたび地中に潜るや、凪を無視してすべるように竹林の先へ進んでいく。

 一拍の間があった。

 それから高い悲鳴が遠く響く。

(――しまった。誰か、襲われたか……!)

 凪は柄から手を放すと、声のする方向へ走りだした。

「うわわわーっ、た、助けてー」

 竹林を抜けるとふいに前方に堅く開けた岩斜面が現れた。
凪は眼を細める。
強烈な白い照り返しで、一瞬状況が把握できない。

(子供(がき)? なんだってまたこんな処に一人で)

 声の主は、まだ年端もいかぬ少年だった。

このあたりの領民らしく麻地の前合わせ上衣に長袴姿で、足に履くのは靴ではなく皮サンダル。
栗色の髪にこげ茶の瞳、頬は丸くつやつやと光り、やや痩せ型の体型をしている。

 大蚯蚓は捕食者を見定めたようだ。

地中から身体を大きく乗り出し、大口を全開にして一瞬止まると、腰を抜かして動けない少年にむかって唾液を吐き――そのまま落ちてくる。

「うあぁ、やばいやばいもう死ぬーっ!」

 凪は迷いなく少年の前にたつと、引き締まった背の柄に手をかけて一気に引き抜いた。

「さがってろ、チビ」

 それは水晶のごとく青く透明に輝く、剣と呼ぶにはいささか巨大すぎる塊だった。

 刀身がきらりと光を反射するや、さく、大蚯蚓の頭と胴体は真っ二つに分断され、軽々と吹っ飛ぶ。

わぎゃー、少年はわめき声をあげながら、飛んできたどでかい頭部を避けようと逃げ惑った。

「はしに寄ってろ、邪魔だ」

「に、兄ちゃんその刀、ひょっとして……」

 ごくり、後ろで少年が喉を鳴らす。

「『闇切(やみぎり)』じゃ――」

 凪は顔色ひとつ変えず、すばやい太刀さばきで妖魔の残骸をめったやたらに切り刻んだ。

「ひぃー、容赦ねえっ、気色悪ーっっっ」

「うっせーなぁ、ったくっ! 地竜は躯(からだ)の造りが単純だから、このくらいしとかねーと、すぐ再生すんだよっ」

 両足を開き、剣をふりかざして、渾身の力をこめふり下ろすと、剣圧でばきりと地面に亀裂が入った。

ついで鈍い轟音とともに大地が揺(ゆ)れ、同心円状の大穴がうがたれる。

「な……んだよこれ、信じらんねー!」

 穴にかけよって中をのぞいた少年はあごを落とした。

中心にあった蚯蚓の死骸は見事に叩き潰され、地に張りついている。

「すっげえーっ、兄ちゃん何者っ」

 凪は我関せずといった体で、粘った液で濡れた刀を一ふりする。

と、刀身はあっという間に輝きを取り戻した。

「よし……仲間もいないようだな。駆除完了」

 ちりん、澄んだ音をたてて刀が鞘に収まるや、少年はこらえきれなくなった様子で口を開いた。

「なっ、なあなあ、兄ちゃんもアレ? 蓬山に棲くう龍の鱗(うろこ)、取りにきた人?」

その2に続く>>

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